ことまちプロジェクト関係者インタビュー② 

「ことまちベース」工事現場の仮囲いに込めた想い

2024/02/20

2023年11月、「ことまちプロジェクト」の拠点となる「ことまちベース」が着工しました。
「ことまちベース」とは、

ワークショップやイベントなどを通して街の魅力について考える実証実験スペース
「ことまちラボ」、

地元の人から街を訪れた人までさまざまな人々が交流できる「こと庭(広場)」、

押上・業平の街の魅力となるお店が集まる「にぎわい施設」

の3つから成る複合コミュニティ施設。
2024年3月のオープンに向けて着々と工事が進行しています。

浅草通り沿いの工事現場を通りかかると、何といっても目を引くのが仮囲いです。

いわゆる無地の白い仮囲いではなく、まるで目隠し用の幕をちょっとだけめくったようなデザインが施されています。

そこから垣間見えるのは、サイクリングをしたりコーヒー片手に談笑したりと各々楽しげな時間を過ごしている人たち。
このイラストを手掛けた日本設計の中居有紀さんに、仮囲いに込めた想いを聞きました。

■目指すのは地域の方々と一緒に取り組む街づくり

「ことまちプロジェクト」という名称が決定する前から、東武不動産の方々とともに押上・業平の街づくりについて考えてきたという日本設計の中居さん。

話し合いを重ねていく中で、現在進行形のライフスタイルに立脚し、リノベーション等の既存のストックや暫定空地活用を中心にしたタクティカルアーバニズムで、都市にインパクトを与えていくアプローチをしていくことになったと言います。

「遠い将来像を描くだけでなく、地域住民の方々の顔が見えるような、地元に入り込んだ小さな取り組みから始めていこうということになりました。
人々の暮らしに直接アプローチできるような街づくりのディレクションを行っていくことが今の我々の役割だと思っています。

ディレクションといっても試行錯誤しながら、地域の皆さんとコミュニケーションを深めつつ、協力しながらやっていこうという方針です」

そうして試行錯誤しながら各所の協力のもとで生まれたものの一つが、「ことまちベース」の工事現場に設置された仮囲いでした。

■仮囲いに想いをのせて

「大規模な再開発では何年も仮囲いがあるというのが通常です。
大型プロジェクトなどでは魅力的なイラストや街の歴史がわかるようなデザインを仮囲いに施す事例が多々あり、仮囲いは発信するツールとしても使えるものだなと思っていたところでした。
大きなプロジェクトのように長い間あるものではなくても、
『ことまちプロジェクト』に対する私たちの想いを発信できるものになるはずだと、まずは自分たちができることからと、仮囲いのデザインを考えるところから始まりました」

肩の力がいい感じに抜けたような、ゆるりとしたイラストは、すべて中居さんが描いたもの。

キッチンカーに並ぶ人たちやビールで乾杯する人々、幾何学模様のドームを囲んで戯れる親子らしき人物たちと、皆がそれぞれの憩いの時間を満喫している様子が描かれています。

中居有紀さん

「街の賑わいが、ちょっとだけ見え隠れするようにしました。
皆さんが想像しやすいものと、『これはなんだろう?』と興味を引くものとを選んでチラ見せさせています。

キッチンカーは街中でも目を引くので一番よく見える端っこに配置して、あとはクラフトビール屋などの店舗が入る予感を感じさせてくれるもの、これまで行ってきたイベントなど『ことまちプロジェクト』の活動が垣間見えるものを描きました。

今後、この緑の幕がはがれていき、『ことまちベース』がオープンして完成形を見ることができるんだなという期待感をもって見ていただけたらうれしいですね」

■想定外がもたらしたワクワク感を楽しんで

当初の構想では、チラ見せではなく、工事の進捗とともに少しずつイラストの全貌が見えていくような仕掛けを考えていたといいます。
ところが、道路上に設置されるもののデザインにはさまざまな規制があることから断念。

各所との交渉や調整の末に誕生したのが、現在のデザインでした。

「想定とは違う形になりましたが、緑の幕をかけることによってストーリー性が追加されたのはすごく良かったと思います。
このアイデアは弊社の発案で、そこに私のイラストとデザイナーのやまねりょうこさんが手掛けた『ことまちプロジェクト』のロゴがかけ合わさって、皆さんのご協力のもとで仮囲いが完成して本当にうれしかったです。

ふだんの仕事の完成形というと“建物の竣工”になるのですが、そうではない形で自分の仕事がお披露目されるという貴重な経験をさせていただいたなと感謝しています」

仮囲いでは実現しませんでしたが、少しずつ「ことまちプロジェクト」の全貌が見えてくるという仕掛けは、「ことまちプロジェクト」のウェブサイトで採用されています。

ウェブサイトのイラストは、仮囲いのイラストからさらにアップデートされているのが見どころです。

これまで行ってきたワークショップの様子を描いたイラストはもちろん、
ことまち1号店としてオープンした壺焼き芋専門店「御芋」さんをイメージしたもの、
将来的に電動キックボードのシェアサービスが押上・業平エリアでもっと普及し、
たくさんの人が行き交ってほしいという中居さんの願望を反映したイラストもあります。

「中居さんのお気に入りのカットは?」と尋ねると、しばし悩みながらも考えて選んでくれたのが、レジャーシートに寝転んだりクッションに座ったりとくつろぎながら本を読んでいる人たちを描いたもの。

「『ことまちベース』にはラボと広場ができるんですが、かっちりとしたイベントだけを行う場ではなく、地域の人にふらっと来てほしいという思いが我々にはあります。なので、ただのんびりとくつろいでいる様子を描いたイラストを入れました。

今後『ことまちプロジェクト』に協力してくださる店舗が増えていく予定ですが、その際も『ことまちプロジェクト』の一環だということがしっかり皆さんに伝わり、また何か楽しそうな施設ができるんだなと期待してもらえるような仕掛けをしていきたいです。そうやって街の人たちに『やっぱりこの地域は楽しいな』『新しいことが増えているな』と体感してもらえることがいちばん大事なことだと思っています」

ぜひウェブサイトのイラストもチェックのうえ、これからの「ことまちプロジェクト」にご期待ください!


ここまでお読みいただきありがとうございます。

WRITER

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岩本恵美(イワモトエミ)

東京・下町生まれ、下町育ちのライター・編集者。Webメディアや新聞紙面の制作に約10年携わり、2016年より独立。本や映画、アート、ものづくり、教育などのテーマで、さまざまな人たちの想いを言葉にすることを生業にしています。叔母一家が押上にずっと住んでおり、学生時代は本所郵便局でアルバイト、「隅田川 森羅万象 墨に夢」(すみゆめ)のレポーターを務めるなど、墨田区とのご縁をゆるりと感じる人生です。