2023年春よりスタートした『ことまちプロジェクト』は、地域の方々と共に、押上・業平周辺のまちの未来について考えていく活動です。浅草通りに面する古民家を解体し、新たな『こと』(文化・活動・体験)が生まれる施設のオープンに向けて、これまでさまざまな取り組みを行ってきました。そして今秋、まちの賑わいづくりの一環として整備していく「ことまち」の1号店として、新たなお店がオープンしました。
「歩きたくなるようなまちを目指し、地域と一体となってこの場所を盛り上げていきたい」。
ことまちプロジェクト推進会議の想いに共感してくださったのは、吾妻橋で壺焼き芋専門店を営まれてきた『御芋-oimo-』さん。
今回、店主の土肥さんご夫妻にインタビューを行い、壺焼き芋の魅力をはじめ、ことまちプロジェクトに賛同してくださった経緯、新店舗のこだわりやこれからの展望など、たっぷりとお話を伺いました。
肌寒くなってきた今日この頃、できたての焼き芋を片手にお読みいただければ幸いです。

素材選びにこだわった、脱「ホクホク」のジューシーな壺焼き芋

お店の窓越しに見えるテラコッタ色の大きな壺と、香ばしい焼き芋のにおいに誘われて、つい立ち止まる歩行者の方も。
2023年10月1日(日)に、前店舗より移転オープンした『御芋–oimo–』は、その名の通り、焼き芋のテイクアウト専門店。江戸時代から存在する壺焼きの手法を用いて、炭火でじっくり焼きながら、およそ1時間半。時間をかけて出来上がった焼き芋は、従来のホクホクした食感ではなく、ねっとり柔らかな仕上がりで、皮ごとおいしく食べられます。
まるでスイーツのような甘い焼き芋をつくるには、「素材選びに一番こだわっています」と店主の土肥弘幸さん。

弘幸さん:「お店では芋を焼くだけなので、元の素材が良くないと、いくら上手に焼いても甘くはなりません。なので季節によって一番おいしい芋や、グレードの良い状態の芋を仕入れています」
『紅はるか』や『シルクスイート』など、同じ品種の芋でも、産地や農場によってまったく味が異なるのだそう。
さらにハロウィンの時期には、南瓜のような食感の『ハロウィンスイート(パンプキンスイート)』、秋口には栗のような甘さの『マロンゴールド』、お正月は赤白の色味で揃えたさつまいもを用意するなど、レパートリーを豊富にすることで、同じ焼き芋でも時期によって違いを楽しめます。
そのほかにも、店頭では干し芋(時期によっては蜜干し芋もあり)や、焼き芋ラテなどを販売中。

炭火焼きで重要なのは、なんと言っても火加減。
大きさの異なる芋によって焼き時間も変化し、また、調理環境によっても焼きあがりが左右されるため、オープン1ヶ月前からお二人で毎日、芋を焼いては試行錯誤を重ねてきました。

理沙さん:「炭火焼きは直接(芋に)熱があたらず、遠赤外線効果でじわじわ焼いていくことによって、皮が身から離れて剥きやすくもなるし、硬くならないのが特徴です。皮に近い身の部分が一番栄養価があるので、皮ごと食べても大丈夫」

古民家の趣をそのまま活かした店舗空間
御芋さんと、ことまちプロジェクト推進会議とのつながりは、東武不動産による『お弁当DAY』、『デザートDAY』と称した取り組みがきっかけです。
本企画は、同社が墨田区の飲食店からお弁当やスイーツなどを購入し、福利厚生を通じて同社員に安価で提供するもの。昨年の秋頃、御芋さんが『デザートDAY』に商品を提供したことから東武不動産と接点が生まれ、社員の方を通じてプロジェクトの概要を伺う機会があったようです。
本プロジェクトの始動時期と、店舗の移転先を探していた御芋さんのタイミングが重なったご縁もあり、この度、ことまちプロジェクトの発信拠点にお店を構えることとなりました。
当初は、長屋跡地に新築予定の商業施設にお店が入る予定でしたが、隣接した一軒の古民家が、弘幸さんの心を掴みました。
本来取り壊される予定だった古民家も東武不動産の所有地で、店舗の倉庫として活用できないかと思った弘幸さんが見学に訪れたところ、一目で気に入ったとのこと。



弘幸さん:「壁の色を塗り直したり照明を変えたりはしましたが、基本的には元々の空間を最大限に活かしています」

「まちを盛り上げたい、という考えを持つオーナーさまのテナントに入れたのは大きかったです」と弘幸さん。
御芋さんもまた、海外からのお客さまと地元の方々が行き交う、浅草通り沿いのエリアを盛り上げたい想いがありました。
弘幸さん:「焼き芋は昔から日本にある伝統的なおやつ。子どもからお年寄りの方まで幅広く楽しんでいただけるし、食べ歩きできる手軽さもあります。食物アレルギーがある人や、海外の方、ベジタリアン・ビーガンの方でも食べていただけます。世界中だれでも楽しめるものを提供しているので、ここで買った焼き芋を、となりの広場(※長屋跡地に設置予定の芝生スペース)で食べながら、いろんな人でにぎわってほしいと思っています」
ことまちプロジェクトの拠点となる2階建ての商業施設では、まちの情報発信やイベントを行う『ことまちラボ』も開設予定。
ラボの活用について伺うと、理沙さんから下記のご提案も。
理沙さん:「焼き芋やさつまいもに関する発信をしてみたいです。今まではテイクアウトだけでしたが、今後はお客さまとお話しをしながら、身近に関われる機会を増やしたい。たとえば『ことまちラボ』でお芋をつかったワークショップをして、そこで生まれたものが商品化できたら面白いですし、お子さまの自由研究になるようなイベントもしてみたいですね」

墨田区はペットフレンドリーなまち
就職を機に、はじめて東京に住んだのが墨田区だったと語る弘幸さん。
当時は建設中のスカイツリーと自宅を往復するのが、定番のランニングコースだったのだそう。
すみだのまちのイメージについて伺うと、「利便性が高い一方で、古き良きものが残っているような。バランスの良いまち」とのこと。
岐阜県出身の理沙さんは、「専門店が多く、地元職人の方々とつながりながらいろんなものをつくったりできるのが良いですね」とコメント。商品の受け渡し口に掲げた提灯は、墨田区横川の『アトリエ創藝館』に依頼したものです。

また、お店の常連さんには、ペットと飼い主が同じ焼き芋を一緒に味わえるということから、犬連れのお客さまも多くいらっしゃるのだとか。
弘幸さん:「すみだのまちには動物病院が多くて、ペットフレンドリーなイメージがあります。歩道が広くて歩きやすいのも良いですし、散歩もしやすい。お店には、焼き芋の匂いにつられたワンちゃんが、リードを握る飼い主の方を連れてきてくれることもあるんですよ」
店舗ではワンちゃん用の干し芋も販売されています。
御芋さんの営業開始にともない、押上・業平周辺の“おしなり”界隈が、まちに新たな賑わいを生み出しています。ぜひ、秋のまち歩きの道中にお立ち寄りくださいませ。

『御芋-oimo-』
住所:東京都墨田区業平1-10-5
営業日時:Instagramの投稿にてご確認ください
Instagram:@o_i_m_o.d
HP:https://oimo.supersale.jp